タイと私と仏教と ~タイのお寺・神社・博物館から~

タイのお寺を通して広くタイ人の信仰を研究中

〖御座船に魅せられて①〗御座船はどこにある?

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王室御座船国立博物館 トンブリ

 

サワディーカ。@yayoiです。

この記事は2019年12月3日にメインブログ

『タイのお寺に魅せられて』にて公開した記事を

編集しこちらに転記しました。

 

私が御座船というものの存在を知ったのは、

2006年くらいでのことですが、当時はそれほど興味を

持ちませんでした。存在を知った理由は

御座船パレードを見に行ったという友人の話で、

そんなに滅多に見られないものなら、タイにいる間に

見に行けばよかったのにと思った程度でした。

 

その後、なぜなのかタイを離れて

シンガポールに行ったころから

徐々に私のタイのお寺好きが始まり、

王室の儀礼ヒンドゥー教

神々のシンボルなどにも深く興味を持ち始め、

シンガポールから近いという理由で

3か月に一度くらい、わざわざバンコク

遊びにくるようになったある時、タイ人の友人と

珍しく週末にチャトチャック市場に行きました。

 

そこで見つけたのがカバー写真に使った

布に描かれた絵。

あまりの美しさに気に入り買って帰り、

それからタイでこの絵や写真を見かけるたびに

この船にどんどん魅かれるようになりました。

気がつけば、友人からもらった記念切手や

きれいだからと友人に送ろうと思って買っておいた

ニューイヤーカードがたまたまこの図柄でした。

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でも当時はそれが御座船だとは知りませんでした。

しかし興味を持ち始めてからはいつか川を進む

この船を実際に見たいと思うようになりました。

 

 

2017年から再びタイに住むことになって

2019年、滅多にない

御座船パレードが予され行われました。 

 

御座船に関する展示などもあり、

かなり御座船の文化に触れる機会が増えました。

そこで前置きが長くなりましたが、2019年度に

私が足を運んだ御座船の展示の様子や

博物館の様子などを含め、

タイ王室の御座船について

このブログに残しておきたいと思います。

 

 

 

 

ついに川に浮かぶ御座船にご対面!

 

   

まずは、2019年5月4~6日にチャオプラヤー川にて

国王がお乗りになる予定の船、

ルアプラティナンスパンナホン

(เรีอพระที่นั่งสุพรรณหงษ์)が国王の戴冠式の間に

数時間、一般開放されました。

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私は5月6日のお昼ごろ行きました。

ワット・ラカンに車を泊めて対岸を眺めてみると、

 遠目に小さく見えているような...

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ズームして撮りました。

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浮かんでいます!

戴冠式で国王のお出ましをみるために渡って行く

人たちに混ざって船に乗ります。

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船で渡って行く途中にもズームして撮りました。

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対岸に着くとみなさんが国王のお出ましを見るのに

並んでいました。

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私はそれを見ながら、王宮と川の間にある施設の

この入口から入って行きます。

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入って行くと広場があります。

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そして、川には…

やっと実物が見れた!遠いけど…

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近寄って行っても国王のための桟橋が前にあり

全体像は見えません。

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でも今まで絵でしか見ていないので、

実物が見られたということで感激しました。

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夕方、国王がお出ましになるまで

船でずっと待機している人達が見えます。

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御座船は何のために…御座船の歴史! 

 

昔、タイでは船は生活や交通網の中心となるものでした。

今でこそ車中心社会ですが、まだまだ船が使われていて、

船は生活にとって必要なものであると同時に、

人々の信仰に関する儀式などにも使われていました。

そこで、御座船がなにに使われていたかというと

仏教の習慣であるトートガティン(ทอดกฐิน)です。

 

実は恥ずかしながら、御座船とは王室の祝い事の

パレードに使われる船だと勝手に思っていました。

タイ人の知り合いに御座船のことだけど...と

話を聞こうとしたら真っ先に、トートガティンの

言葉がでてきました。仏教徒タイ人は仏教の大切な

行事に使われる船であるということを知っているのです。

 

トートガティンとは、カティナ衣奉献祭といい、

雨季にお寺にこもっていた僧侶たちが出てくる、

つまり雨安居の終わりを祝う出安居

オークパンサー(ออกพรรษา)の祭りから

陰暦12月満月の日までの1か月間に行われるもので、

雨安居あけの僧侶に新しい黄衣を寄進する儀礼です。

 

ちなみにこの陰暦12月の満月といえば、

その日はタイはローイクラトンの日。

今はお祭りにもなって外国人にも人気ですが、

もともとはバラモン教の習慣で、

船が通る川には神様がいて、

陰暦12月の満月には、その神に人間の生活に必要な

水を与えてくれる感謝と、川を汚すことに対する

謝罪をするための儀式などを行うものです。

仏教寺院でも一晩読経があり、

在家信者の功徳を積む機会でもあるのです。

このようにローイクラトンもトートガティンも

タイでは毎年の大切な行事となっています。

 

そして、トートガティンについて話をもどすと、

昔は交通の手段は船だったから、

位の高い人はそれに応じて、できる限り

威厳のある、高貴なものにに船をしつらえていたそうです。

王室の儀礼として布を献上するのにも

船はとても大切なものとして扱われ、

太鼓の音にあわせ、列をなして、船で進んだそうです。

 

また、船は他の儀礼、例えば、

貴重な仏像をある町から他の町へと

招来するときの儀式。

他の国の国王や君主と友好や親善を深めたり、

やりとりの書簡を受ける儀式。

そして、王が新しく即位して庶民の前に

お出ましになる時。

などなど船は貴重な役割を果たしてきました。

 

今年2019年は新しい国王が王位につかれ、

戴冠式が行われ、御座船のパレードで庶民の前に

再びお出ましになる予定ですが、

ワット・アルンでのトートガティンはないそうです。

 

その御座船ですが、通常は8隻がトンブリー地区の

王室御座船博物館にて管理されています。

そこで今回はその博物館の様子をご紹介します。

 

 

船の倉庫も兼ねる博物館!

  

博物館はチャオプラヤー川の支流に面していて

その小さな運河の向こう岸にはシリラート病院が

見えます。

以前のブログに書いたワット・アマリンに行った時は

船からのアプローチだったので、次のお寺に

行くときに王室御座船博物館が見えました。

2015年7月撮影。

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ずっと気になっていましたが、ちょっと遠くて

なかなか行く機会がなく、

実際に行ったのは2019年5月8日でした。

なぜこの日に行ったかというと

この記事の初めに書いた、

戴冠式の時に王宮前に出ていた

ルアプラティナンスパンナホンが

この博物館に帰ってくる予定の日だと

きいていたので、運がよければ帰ってくるのを

どこからか見ることができないかと思って、

この日に行ってみました。

 

しかし、博物館の職員の方の話では、

昼間は水が引いているから

戻ってくるのは夜遅いといわれました。

確かに水がほとんどありません。

みえる大きな建物がシリラート病院です。

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タマサート大学の近くの船着場タープラジャンから

対岸の船着場タープラーンノックまで船で渡り、

そこからタクシーで行きました。

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この入口から入って一番奥に博物館があります。

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右手側は運河。船がたくさん停泊しています。

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ここが博物館の入り口。

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入り口を入り右に行くとこのチケット売り場があります。

チケットと写真撮影代を支払いました。

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この博物館の歴史を探ってみると、

ここは、もとは戦に使う船や王室の船を

保管しておく倉庫でした。

タイ王室庁と海軍が管理していましたが、

第二次世界大戦の爆撃で

被害を受け、1947年に、政府は芸術局に

修理や管理を委任しました。

 

パレードや王室行事に使われるすべての船は

昔からの歴史があり、芸術的にも素晴らしく、

王室御座船は世界でも唯一タイだけに

あるものなので、国も文化遺産として、

1974年に倉庫であると同時に、

“王室御座船国立博物館”として登録しました。

 

パレードに使う8隻だけが停泊、

王室の方が乗船されるメインの4隻と

護衛船が4隻が公開されています。

実際にパレ―ドには52隻の船が使われるので、

ワット・ラーチャ―ティーワート

ウィハーンの近くの

ターワースクリー船着場に6隻が、

残りの38隻は海軍にて管理されているようです。

 

 

実際にパレードに使う8隻!

  

船はきれいに並んで停泊していて、

最後に一覧表にしましたが

1隻1隻がかなり長いのです。

前はすぐ川なので、

全体写真は撮れないのが残念ですが…

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入り口から順番に1隻ずつみていきます。

 

1.เรืออสุรวายุภักษ์   

  The Asura-Vayuphak Barge  

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2.เรือพระที่นั่งอนันตนาดราช

  The Royal Barge Anantanakaraj

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3.เรือพระที่นั่งอเนกชสาติภุชงค์    

   The Royal Barge Anekchart phuchong

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4.เรือครุฑเห็นเห็จ    

  The Garuda Hern Het Barge

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5.เรือพระที่นั่งสุพพณหงส์        

  The Royal Barge Suphannahong

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6.เรือพระที่นั่งนารายณ์ทรงสุบรรณรัชกาลที๙

  The Royal Barge Narai Song Subun

  H.M.King RamaⅨ

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7.เรือกระบี่ปรายเมืองมาร        

  The Krabi Prab Mueang Man Barge

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8.เรือเอกไชยเห็นหาว            

  The Ekachai hern Hao Barge

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順番に船の名前と造られた年代、

幅、長さ、深さ、重さ、

乗組員の人数などを表にしてみました。

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古くても輝いている船首の飾り!

  

ここにはかつて使われていた古い船首の飾りなども

きれいに保管されています。

 

The Royal Barge Narai Song Subunの

船首部分

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The Royal Barge Sri Prapassorn Chai

船首部分

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Touy Thep Thawaikoru Bargeの

船首部分と台座部分

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他には 小舟など。

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一方、ガラスケースの中にも

いろいろなものが展示されていました。

 

船首部分の飾り。

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オールや太鼓、旗といった小物類まで。

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乗組員のユニフォームを着たマネキン。

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パレードの順番を詳細に表した図。

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タイ人の細かい修理の技術!

 

博物館、倉庫は修理人が修理を行う場でもあり

みな、手作業で細かく修理をしています。

至る所に足場が組まれています。

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筆で色を塗り重ねる。

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手で金をはる。

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機械を使っての仕事。

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中でも最も大規模なのは、

The Royal Barge Narai Song Subun

H.M.King RamaⅨの船首部分の修理のようです。

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それを横目にビデオルームでは

The Royal Barge Narai Song Subun

H.M.King RamaⅨが実際に川に浮かんでいる

ビデオが流れていました。

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今回はこれで探索を終わります。

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< 王室御座船国立博物館 >

 

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正式名称  พิพิธภัณฑสถานแห่งชาติ เรือพระราชพิธี

      National Museum of Royal Barge

      王室御座船国立博物館

所在地   80 1 ถนน อรุณอมรินทร์ แขวง อรุณอมรินทร์

       เขตบางกอกน้อย กรุงเทพมหานคร 10700

                      80 1 Arun Amarin Rd, Arun Amarin,

                      Bangkok Noi, Bangkok 10700

開館時間 0900₋1700

 

この記事は下記を参考に書いたものです。

参考サイト

http://www.finearts.go.th/museumroyalbarges/

参考図書 

『静と動の仏教』(佼正出版社)

『タイの事典』(同朋舎出版

『เรือพระราชพิธี Royal Barges』(The Fine Arts Department)

 

 

ご訪問いただきありがとうございました。

@yayoi